新井研究室(複合材料研究室)では

繊維強化プラスチック(FRP)に代表される高分子複合材料やセラミックス等の非金属材料の強度と寿命予測等について、主に
 「スペース・デブリ衝突
 「異物衝突損傷(バードストライク)

 「スポーツ用具の緩衝性能向上
 「エロージョン
について、人類と機械の「安心・安全]のための研究を行うとともに、新たな先端複合材料の創製をめざしています。

@ スペース・デブリ衝突
 
宇宙輸送システム確立のためには、航空機なみの高い信頼性や安全性、自在な運用性を持つスペースプレーンの開発が急務です。しかし、地球周回軌道上には、ロケットや人工衛星の残骸等の人工的なごみ、すなわちスペース・デブリ(space debris)が超高速で周回しているため、スペースプレーンや宇宙ステーション等に衝突した場合には、大きなダメージを与えることになります。
 そこで、
宇宙用構造材に用いられる耐衝撃新素材(シールド)の創製を目的として,スペース・デブリ衝突を想定した実験装置の開発や実験と数値シミュレーションを行っています。




A 異物衝突損傷(バードストライク)
 現在、航空機には比強度・比剛性の高いCFRP等の複合材料が、水平、垂直尾翼やジェットエンジン等に使用されています。航空機は小さな石、鳥や雹などの異物の衝突が起因となる損傷を受けることがあり、このような損傷は「異物衝突損傷」(Foreign Object Damage(FOD))と呼ばれています。一般的に最も危険なFODは、衝突体が大きい鳥の衝突、すなわち「バードストライク」です。その被害は航空機構造体の損傷にとどまらず、墜落により人命におよぶ危険性もあるため、バードストライクが発生した場合でも構造体は健全性を失ってはいけません。本研究ではCFRPを航空機構造体に安全に使用するために、バードストライクによる複合材料の耐衝撃データの充足と損傷挙動の検討を行っています。


B スポーツ用具の緩衝性能向上
 野球では,死球と呼ばれる事故が頻繁に見受けられ、近年では死球による死亡事故は見られなくなっていますが、脳震盪といった傷害は依然発生しており、安全に競技を行うためにはヘルメットの緩衝性能をさらに向上させることが重要です.現在の主要な硬式野球用ヘルメットの構造は、外層のシェル材と内層のライナー材から構成されています.本研究では、ヘルメットのシェル材とライナー材として種々のプラスチック系材料および複合材料を用いてその緩衝性能の向上を目指しています。その他に、スポーツ用プロテクターやアイガードの耐衝撃性、卓球用ラケットの反発性能などの研究も行っています。



C エロージョン
 エロージョン(
Erosion)とは、流体中に含まれる固体粒子、液滴などの繰り返し衝突作用により材料が損傷される現象です。例えば、氷雨の衝突による飛行機の主翼の損傷や、粉体の空気輸送管などに見られる摩耗・損傷がこの典型例です。
 軽量で高比強度・耐食性を有するFRPや、高強度・高耐熱性を持つセラミックスなどのエロージョン損傷機構の解明と寿命予測等について研究を行っています。




(D 攪拌)
 攪拌
(
Mixing)とは、簡単にいうとモノを混ぜることです。物質製造では必ずその製造プロセスにおいて攪拌が行われます。この攪拌が悪いと均質な物質(材料)ができず、その強度等に影響を及ぼします。そこで、攪拌機械の数値シミュレーションを行い、シミュレーション結果の実験的検証、攪拌機械の混合性能や動力性能などの評価を行っています




このほかに、
学外((独)宇宙航空研究開発機構(JAXA))の研究所などと共同研究も行っています。

このように、
主に複合材料やプラスチック、セラミックスなどを対象に、
上流(製造過程)から使用時の損傷、さらには下流(寿命予測・リサイクル)などに
ついて検討し、
新たな先端複合材料の創製をめざしています。